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キケンな「ブラック企業」はこう見抜け!~たった一つの指標でわかる

2016年03月14日
タイトルライン
「現存する『就活本』としては断然のベスト」と経済評論家の山崎元さんが太鼓判を押す『進め!!  東大ブラック企業探偵団』という「企業分析小説」が今、東大・京大でいちばん売れている。

その本の著者で、東大経済学部生の大熊将八さんが、3月1日の就活解禁日に、就活生向けのセミナーを開いた。場所は、東大本郷通りと言問い通りの交差点近くのイベントスペース。

小説のモデルとなった「Tゼミ」(瀧本哲史京大准教授が顧問)で実践されている最強の企業分析の「秘伝」を伝授すると銘打ったこのセミナーで、就活生30余名を前に語った、「本当のホワイト企業」「実は危ないブラック企業」の見分け方とは?
 
. 「就活強者」でさえ「情報弱者」

2017年卒の就職活動が3月1日に解禁されてから1週間あまりが経過しました。就活生は連日、スーツに身を包んで合同説明会の会場を渡り歩き、移動する電車内で不慣れな分厚い就職情報誌に必死に目を通しています。

「OB訪問は積極的に活用するべき」「いや、行く意味がない」

「エントリーシートや面接での自己PRは、自分を盛れ」「素のままの自分で勝負しろ!」

「もう、内定が出ている人がいる」

そんなてんでバラバラな情報があちこちで飛び交い、何を信じていいのかわからなくなる。

それもそのはず、就職活動の場では大量の「広告」と「思い込み」の情報が垂れ流されていて、正確な判断材料となるものはほとんど流通していません。

どういうことでしょうか。

それは、就職情報誌の「ビジネスモデル」を考えてみると一目瞭然です。リクナビやマイナビなどの企業情報サイトを使う際、ユーザーである学生がお金を払うことはまずないですよね。就活エージェント主催のイベントや説明会もほとんどは無料でしょう。ではそれらのサービスを提供する会社はどうやって儲けているのか? 

第一の収入源は、広告を出稿している企業のスポンサー料です。他にも採用の成約に応じて報酬が支払われることもありますが、とにかく、就職情報メディアの収入を支えているのは企業であって学生ではありません。だから構造的に、就職情報メディアは企業にとって都合の悪いことを載せられないのです。企業の説明会も自社の宣伝の場だから、同様のことが言えます。

では、就職情報メディアや企業ではなく、身近な先輩の生の声を聞けば安心でしょうか?残念ながらそうとも言えません。その先輩も就活に関して情報弱者(いわゆる「情弱」)である可能性が高いです。たとえ一流企業にいくつも内定した「就活強者」であっても。

何故なら、新卒の就職活動は人生で1回しか経験しないからです。これが例えばいいレストランを選ぶとかいい美容院を選ぶということであれば、何度手痛い失敗をしてもその度に学んで、より良い意思決定に活かすことができますが、就活ではそれができません。

就職に限らず、受験・結婚・住居の購入など、「おみくじ」の項目に挙げられるライフイベントは基本的に人生で1回こっきりで、そのため正しい情報に基づいてベストな判断を下すことが極めて困難です。

「 オレはOB訪問に行かなくても受かった、だからOB訪問に行くのは無駄」と豪語する先輩がいたとして、その先輩がもし熱心にOB訪問に行っていたらどうなっていたのかを検証することはできません。ひょっとしたら、もっといい会社にもっといい条件で内定していたかもしれないのに。

これに対して、就職情報メディアや企業サイドは、毎年次々と新しい就活生をさばいていくので、どんどんノウハウが蓄積されていきます。

このように、就活というのは構造的な情報格差によって学生が「弱者」にならざるを得ない仕組みとなっているのです。だから毎年、学生はよくわからないまま就活を始め、よくわからないまま就活を終え、そして実際に会社に入ってから後悔します。

売上絶好調でも倒産した企業

そうならないためには、「ファクト(事実)」に基づいて企業分析できる目を養う必要があります。ファクトとして有効なものとしてまずあげられるのが、「有価証券報告書」です。これは上場企業が四半期ごとの決算期に開示を義務づけられているデータで、その企業の経営に関するあらゆる情報が数値化されています。

「有価証券報告書を過去5年分読んで、企業の将来性を自分で分析せよ」と、就活のセミナーで聞いたことがある人もいるかもしれません。

ただ、そうは言っても、これをやみくもに読むのは非常に骨が折れます。

この画像は、とある会社の「有価証券報告書」の表紙の次のページを映したものです。細かい字でびっしりと数字が並んでいるこの表の中で、事前知識なしに理解できるのは「売上高」ぐらいでしょう。「利益」でさえ、経常利益とか当期純利益とか包括利益とかいろいろあって、一見何がなんだかわかりません。こんな表が延々、百数十ページにわたって続くのが「有価証券報告書」です。結局、読み解くのを断念して、わかりやすい説明を求めて、企業の説明会の場に赴く学生がほとんどなのも無理はありません。

説明会でよく使われるのが、このようなグラフを用いたスライドです。売上高が右肩上がりであることを示す棒グラフの下に、「弊社はリーマン・ショックから立ち直って業績はうなぎのぼり、将来は明るい!」といったうたい文句も添えられていることもあります。

だが、こういった情報を鵜呑みにしていては悲惨な未来が待っています。実は、上に挙げたグラフは、昨年倒産した実際の東証一部上場(当時)企業の「江守ホールディングス」の業績推移です。

. 学生でも「たった1つの指標」からダメ企業が見抜ける

自己紹介が遅くなりました。僕の名前は大熊将八。京都大学客員准教授のもとで公開情報に基づく企業分析を学び、投資に値する企業を探し出すことを目的とするインカレサークル「瀧本哲史ゼミ」の立ち上げメンバーの一人で、東京大学の経済学部に在学中です。

先日、ゼミでの企業分析活動をもとにした経済小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』を講談社より出版しました。

実は、瀧本ゼミ生の一人は、先ほどあげた「江守ホールディングス」の実態が危ない会社であることを、たった1つの指標に注目することで、業績が急激に悪化してメディアや投資家から注目を受ける1年以上前から見抜いていました。

その「たった1つの指標」とは何でしょう。ヒントは「企業はいつ倒産するのか?」です。

企業は、借金が膨らんでも、大赤字を出しても、倒産しません。お金が尽きた時にだけ倒産します。

その、企業のお金の流れを示す「キャッシュフロー計算書」という指標が、先ほどの「有価証券報告書」には掲載されています。

このグラフを見た途端に、瀧本ゼミ生であれば全員、この江守ホールディングスは「危険」だとわかります。

「キャッシュフロー計算書」に掲載されている3つの指標はそれぞれ、
・営業キャッシュフロー:本業で稼いで、入ってきたお金(+であるほどいい)
・投資キャッシュフロー:投資で使ったお金(積極的に投資している場合は? 
・財務キャッシュフロー:借りたお金と返したお金の差し引き(借金を増やしている時は+)を表しています。

江守ホールディングスについて見てみると、売上は伸びているはずなのに、どんどんお金が出て行っていて(営業キャッスフローが-)、借金が膨らんでいる(財務キャッシュフローが+)。つまり実際には本業によって稼げておらず、その分負債を増やしているということがわかるのです。

難解な有価証券報告書の全てを読み解くのは困難でも、1ページ目にも掲載されている「キャッシュフロー計算書」が何を表すのかをわかっているだけで、ひとまず企業が本当にお金を稼いでいるのか、お金に困っていないかが一目瞭然です。このように、実は企業分析はほんの数パターンさえ覚えてしまえば簡単にできるのです。

このほかにも、総資産に占める負債の割合を示す「有利子負債比率」や、企業の持つ在庫が捌けるまでの日数を示す「棚卸資産回転期間」などの指標も覚えておけば、いろいろな角度から企業の内情を知ることができます。

これらについての詳しい説明は、拙著『進め!! 東大ブラック企業探偵団』で、東大生探偵団の活劇を描く形式でわかりやすく解説したつもりなので、ぜひ参照してほしいです。
 

 『進め!! 東大ブラック企業探偵団』大熊将八著